たかはし 秀行 ブログ
【地震のとき】猛暑の避難生活から命を守るには
2026/7/31
熊本地震
新潟大学特任教授 榛沢和彦氏に聞く
2026/07/31 公明新聞より
28日に発生した最大震度7の「令和8年熊本地震」。被災地では厳しい猛暑が続いており、避難生活の長期化による健康被害が懸念されている。10年前の熊本地震では、犠牲者の8割が災害関連死だった。多くの災害現場で関連死を調査してきた新潟大学特任教授の榛沢和彦氏に避難生活の注意点を聞いた。
■脱水が招く肺塞栓症(エコノミークラス症候群)に注意
――猛暑下の避難生活で懸念されることは。
熱中症に気を付けるのは当然だが、その根底にある「脱水」を防ぐことが極めて重要だ。暑さで大量に汗をかき、体が干上がってしまうと血液が濃縮される。これが引き金となり、足の静脈に血栓(血の塊)ができ、肺の血管に詰まって呼吸困難を引き起こす「エコノミークラス症候群(肺塞栓症)」のリスクが跳ね上がる。10年前の熊本地震では少なくとも2人が死亡し、その何倍もの人が搬送された。
■車中3泊以上でリスク4倍増
――車中泊で避難している人も多い。
車中泊は、エコノミークラス症候群の危険性が非常に高くなる。過去のデータでは、車中泊が3泊以上になると血栓ができるリスクが約4倍に高まっていた。
急性期(発災から2週間以内)の車中泊で発症しやすいのは、40~50代の働き盛りの女性だ。過去の震災でも重症化するケースが目立った。背景として、この世代の女性は子どもや高齢の親の世話に追われ、自分自身の食事や水分摂取といったケアが後回しになってしまうことが考えられる。
■1日計2リットル、水をこまめに
――エコノミークラス症候群の予防法は。
血栓を防ぐためには、血流を維持するための運動、特に歩くことが効果的だが、脱水状態では、いくら歩いても血栓ができてしまう。そのため十分な水分補給が欠かせない。大人の場合は、1日に約2リットル(500ミリリットルのペットボトル4本分)を目安に飲んでほしい。一度に大量に飲んでも尿として排出されてしまうため、1~2時間に1回、コップ半分(100~150ミリリットル)程度をこまめに飲むことが大切だ。
車内で寝る場合は座席をフラットにするか、難しければ足を上げて寝てほしい。2~3時間置きに車外に出て歩くことや、足の運動・マッサージ【イラスト参照】、弾性ストッキングの着用も心掛けるべきだ。
■「携帯用」含め トイレ確保もセットで
――水分補給を促してもトイレ問題が壁に。
その通りだ。トイレ環境が整っていないと、排せつを我慢しようと水分摂取を控えてしまい、結果として脱水に陥ってしまう。大便を我慢すれば、便秘や胃腸障害にもつながる。「水を飲め」と呼び掛けるだけでなく、清潔で安心して使えるトイレ環境が不可欠だ。
車中泊避難者が集まる場所も含めて、トイレ環境を整える支援が求められる。仮設トイレが間に合わなくても、プライバシーが守られる空間を用意すれば、さしあたっては携帯トイレでも構わない。
■子どもの心のケア急げ
――夏休み中の発災となり、子どもたちの心のケアも課題だ。
地震の恐怖に避難生活のストレスが重なれば、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症リスクが高まる。可能であれば被災地を離れ、親戚などを頼って安全な場所へ“疎開”させることも検討してほしい。
米国では発災直後からDMAT(災害派遣医療チーム)と共に児童専門の心理士が派遣され、子ども用の遊び場テントが設営されるなど徹底したケアが行われている。日本もこうした取り組みを進めてもらいたい。
――行政に強く求めたい支援は何か。
まず段ボールベッドを被災者全員が使えるようにすること。そして電源車と冷房装置の配備を最優先で進めるべきだ。
政府は「プッシュ型支援」を強調するが、物資がバラバラに届けられると、現場の受け入れ側に混乱を生む。
例えばイタリアでは、避難所立ち上げに不可欠な「TKB(トイレ、キッチン、ベッド)」をパッケージにして48時間以内に届けている。日本も一刻も早く避難所の質を標準化し、災害関連死を防がなければならない。
はんざわ・かずひこ 新潟大学医学部卒。医学博士。専門は心臓血管外科。エコノミークラス症候群予防・検診支援会会長。2004年の新潟中越地震をきっかけに避難所や被災地での検診活動を続けている。
八千代市議会議員 たかはし秀行