2026/6/13
先日、二度目となるJIAM(全国市町村国際文化研修所)での研修に行ってきました。
今回のテーマは「決算」です。
正直に言うと、決算という言葉を聞いて、ワクワクする人は少ないと思います。
私自身、議員になる前は「予算」と「決算」の違いすら、ぼんやりとしか分かっていませんでした。
来年度これだけ使いますという計画が予算で、その一年が終わって実際にこう使いましたという結果が決算。
それくらいの理解です。
でも、今回の研修で講師の先生が最初におっしゃった一言が、ずっと頭に残っています。
「決算は、終わったことの確認ではない。次の予算につなげるためのものだ」
これは武豊町の議会にとって、けっこう大事な視点だと思うので、今日はそのことを書きます。
研修ではまず、決算がなぜ予算ほど注目されないのか、という話から始まりました。
理由はシンプルで、決算は議会が「不認定」としても、法的には何も起こらないからです。
予算は議会が認めなければ町は動けません。だから真剣に審議されます。
一方、決算はすでに使い終わったお金の話なので、ダメ出しをしても、もう取り返せない。
だから、どうしても重視されにくい。
ここが、民間企業とはまったく逆なんですね。
私はチタコーポレーションでサラリーマンもしていますが、民間では決算こそがすべてです。
一年の利益がそこで確定する。決算がよくなければ会社は続けられません。
でも自治体は、利益を出すための組織ではありません。
住民の暮らしを支えるために、お金をどう使ったかが問われる。
民間が複式簿記・発生主義で利益を測るのに対し、自治体は単式簿記・現金主義。
そもそもルールも、組織の目的も、存在意義も違うわけです。
だからこそ、と先生は言います。
利益で良し悪しを測れない自治体において、では何をもって「いい決算」「悪い決算」を判断するのか。
これが決算審査の本質的な難しさであり、議員が本気で向き合うべき部分なのだと。
研修で学んだ数字の見方を使って、武豊町の立ち位置を確認してみました。
武豊町は、財政力指数が1を超える「不交付団体」です。
これは全国でわずか85団体しかありません(全国平均は0.51)。
つまり、国からの仕送り(地方交付税)に頼らなくても、
自前の税収で町を運営できる「稼ぐ力」のある町だということです。
さらに、新しいことに挑戦する余裕を示す「経常収支比率」も73.2%。
全国の町村平均が88.8%であることを考えると、これはかなり健全な数字です。
数字だけ見れば、武豊町は明らかに「優等生」です。
……と、ここで終われば気持ちがいいのですが、
研修で一番心に刺さったのは、まさにこの先の話でした。
講師の先生は、はっきりとこう釘を刺したのです。
「財政診断は、あくまで現在の相対的な比較でしかない。将来を予測するツールではない」
これは重い言葉だと思いました。
今の数字がいいことと、これからも大丈夫なことは、まったく別の話だということです。
全国の自治体と並べて「武豊町は上のほうにいますね」とは言えても、
「だから10年後も安泰です」とは、誰にも言えない。
この視点を踏まえて、私が今、武豊町の財政について引っかかっている点を、正直に書いておきます。
研修のメモにも残した、私自身の問題意識です。
ひとつは、期間限定の税収が終わった後の予測です。
今の好調な数字が、一時的な要因に支えられている部分はないか。
その要因が消えたとき、数字はどう動くのか。
「今がいいから将来もいい」という延長線上の発想では、見落とすものがあるはずです。
もうひとつは、残債の扱いです。
借金には、交付税を増やしてもらう約束付きの「有利な起債」というものがありますが、
講師の先生は「お得な起債に飛びつくな」とも言っていました。
どんなに条件がよくても、借金は借金。
しかも、建物を建てる費用そのものは経常収支比率に入らないのに、
建てた後の維持費はずっと町の負担としてのしかかってくる。
目先の有利さだけでなく、維持コストまで含めて判断する目が要る、ということです。
そして、職員の退職。
これは武豊町に限った話ではなく、全国の自治体で課題になっています。
人が辞めていく影響は、いつか、どこかの数字に必ず現れる。
それがどの指標に、どう出てくるのか。
今のうちから見ておきたいと思っています。
ここからが、今回の研修を受けて、私が武豊町議会に提言したいことです。
第一に、決算審査にもっと時間をかける体制を考えたい。
研修では、決算審査に3日、4日とかける自治体が珍しくないことを知りました。
先進事例として紹介された静岡県藤枝市では、
予算と決算を専門に扱う常任委員会をつくり、すべての事業ではなく
重要な事業を抽出して、じっくり評価する仕組みを持っています。
私が理想だと思うのは、議員一人ひとりが同じような質問を繰り返すのではなく、
それぞれの得意分野・専門性を持ち寄って、議会全体として多角的に審議する形です。
そのためには、ある程度まとまった審議の時間が要ります。
委員会化という選択肢も含めて、検討する価値があると感じました。
第二に、町がすでに持っているデータをもっと活用したい。
武豊町には独立した「行政評価制度」はありません。
ですが研修で、各種の補助金や計画の中で設定されているKPI(目標数値)が、
その代わりに使えるという示唆をもらいました。
新しい制度をいきなりつくらなくても、今ある資料を審査の素材として活かす道はあるということです。
ちなみに、武豊町のホームページには「財政状況資料集」が公開されています。
今回ご紹介したような指標は、町民の皆さんも見ることができます。
数字は、住民の皆さんへの説明にこそ説得力を持ちます。
私自身、こうした数字を分かりやすくお伝えしていくことを、これからの役目だと思っています。
正直に書きます。
今回の研修で、財政全体を見るための指標の「読み方」は、かなり理解が進みました。
経常収支比率、実質公債費比率、財政力指数。
こうした言葉に、以前より体温を感じられるようになりました。
でも同時に、本当に難しいのはその先だと痛感しています。
全体の数字が見えても、一つひとつの事業の中身、個別の明細をどう審議するか。
武豊町のような小規模な自治体では、むしろこの「個別の中身」を見る力こそが大事なのではないか。
決算は終わったことではなく、次の予算への第一歩。
この言葉を胸に、これからの武豊町の決算審査に向き合っていきます。
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ホーム>政党・政治家>谷川 健一郎 (タニガワ ケンイチロウ)>決算は「終わったこと」じゃない ── JIAMで学んだ、財政を見る目