2026/6/13
大山崎町では令和8年度も「英語検定等の受験料の補助制度」が実施されます。
小学生から中学3年生までが対象で、1回あたり上限1,000円。さらに高校受験を控えた中学3年生にいたっては「全額補助」という非常に手厚い内容です。
英検の受験料は値上がりが続いています。例えば3級を本会場で受けると6,800円。私が中学生だったころは2,000円台だったそうなので、かなりの上がり幅です。家計への負担を考えると、子どもが「受けてみたい」と言ったときに自治体が背中を押してくれるのは、非常にありがたい、素晴らしい制度に思えます。
ただ、この制度、私の中にどうしても消えない「モヤモヤ」が湧いてきました。
この補助制度は「児童生徒の英語力及び学習意欲を高めることと英語教育の振興を図ることを目的」(大山崎町公式サイトより)としています。この目的達成のために、できる方法はたくさんあると思いますが、その中でも「英検の検定料補助」になっているのはどうしてでしょうか。
検定試験日というタイムリミットがあることや、より高い級に合格することはモチベーションになります。
私自身も先日、初めてのTOEICを受験し、意外と点が良かったので、もっと点を取りたいという気持ちになりました。もし点数が悪かったらもう英語はいいかなと諦めてしまったかもしれません。
つまり、英語にモチベーションがある人にとっては英検が、上記の目的達成に寄与すると思いますが、モチベーションがない人にとっては目的達成に寄与しないのではないかと考えていました。
しかし、英語へのモチベーションが高くない人が「英語を勉強しよう」と思うきっかけに、英検が値する現状があることがわかりました。
それは、なぜ中学3年生だけが「全額補助」という優遇を受けられるかに理由があります。
その理由は、京都の高校入試事情です。実は、京都府内の多くの私立高校(京産大附属や龍谷大平安など)では、英検3級や準2級を持っているだけで、当日の入試点数に「10点〜30点」もの加点がついたり、「みなし満点」の優遇が受けられたりします。
つまり、この補助金には、町が掲げる「英語への学習意欲を高める」という目的だけではなく、「町の子どもたちが高校受験のシステムで不利にならないための、現実的な受験対策費」という側面もあるのです。
「英語教育の振興」は受験対策のことで良いのでしょうか。
受験を応援してくれるのはありがたい。けれど、私はどうしても疑問に思ってしまうのです。 「そうやって『受験ハックの道具』として手に入れた英検の級に、どれほどの意味があるのだろう?」と。
実は、私自身がまさにそうでした。 かつて試験対策英語のノウハウを叩き込み、受験英語の枠組みのなかではそこそこできたという自負があります。では、その結果として、大学の授業や、社会に出てから役に立つ実践的なコミュニケーション力や、学術的な場面でも有効な「総合的な英語力」が身についたかと言われれば、答えは「ノー」です。
一方で、学生時代に試験英語が苦手だった友人が、海外で活躍していることも少なくないです。ペーパーテストで高得点を取るための英語と、自分の言葉で世界とつながるための英語は、全くの別物でした。
行政がお金を補助して「英検を受けなさい」と促すことは、子どもたちにテストのための手段としての英語学習へ囲い込むことになりはしないでしょうか。
それに、もし「受験に有利だから」という理由で税金を使って補助するなら、同じように多くの高校で加点対象になっている「漢字検定」や「数学検定」はどうして補助しないのでしょう?「国がグローバル化を推し進めているから」「英語がトレンドだから」という大人側の都合で、特定の教科だけを特別扱いすることには、どうしても歪さを感じてしまいます。
私は、行政がやるべき教育投資は「一律の英語推し」ではないと考えます。 本来の教育とは、大人から与えられた目標に向かって競争することではなく、子どもたちがそれぞれの「学びたい!」ということを見つけ、それを応援することのはずです。
もし、町が本当に子どもたちの意欲や未来に投資したいのであれば、対象を「英検」だけに限定せず、もっと自由で広い枠組みにしてはどうでしょうか。
例えば、年間〇千円の「チャレンジ応援クーポン」を子どもたちに配るのです。
英検や漢検、数検などの資格試験に使ってもいい。
ロボットコンテストやピアノコンクール、スポーツ大会のエントリー費に使ってもいい。
あるいは、ポケモンカードや、eスポーツの大会参加費に使ってもいい。
今の時代、何が子どもの将来の夢や、思わぬ才能の開花につながるかは誰にも分かりません。自分の好きな分野で「本気で打席に立つ経験」をすることこそが、子どもの生きる力(内発的動機)を育てる最高の教育だと思うのです。
「みんな同じ方向を向いて、英検を頑張ろう」という時代は、もう終わりつつあります。
これからの大山崎町には、英語が得意な子も、数学に没頭する子も、ゲームやスポーツに青春をかける子も、「君が本気で挑戦したいことなら、町が全力で応援するよ!」と、一人ひとりの異なる熱量を信じて支えてくれる、そんな器の大きい町であってほしい。広報の小さな案内を見ながら、そんなことを願っています。
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ナガスナ シンヤ/37歳/男
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