2026/6/24
「基金(貯金)が財源だから1,700万円支出しても問題ない」は通用しない。
佐賀県武雄市議会が過日、定例会で可決した佐賀バルーナーズのプレシーズンマッチに係る1,700万円の補正予算(当初とあわせて総額2,500万円)について、予算に賛成する議員から「1,700万円の財源は税金ではない」「スポーツ振興基金はネーミングライツ等の広告料収入だから切り崩しても問題ない」という趣旨の発言が繰り返された。
住民の批判と疑問の高まりを受けて、武雄市側が総務常任委員会あたりからそういった趣旨の説明を強めていたようだ。
この状況を見ていた佐賀県庁OBや他自治体の財政担当職員から「あの説明はないね。行政組織として失格」との厳しいご指摘をいただいた。
確かに、そうだ。
まず、基金(市の貯金)は余っているお金ではない。また、市役所の便利な財布でもない。条例で目的を定め、どのように金を集めたか(広告料収入、ふるさと納税寄付金等)は関係なく、あくまでも条例で定めた目的のために積み立てられた「市民の財産」である。
ゆえに基金を使う際に問われるのは「基金に残高があるか」ではない。
・その基金の目的に合っているのか。
・その目的を達成するために本当に必要な支出なのか。
・他の方法と比べて合理的なのか。
・地方自治法や地方財政法が定める最少の経費で最大の効果を挙げる設計になっているか。
・終わった後に効果を測れるのか。
が問われる。
今回の問題は、佐賀バルーナーズの価値でも、バスケットボールの魅力でもない。
問題はスポーツ振興基金から1,700万円を切り崩すにあたり、武雄市が何を根拠に「この支出は基金目的の達成に必要だ」と判断したのか、という点である。
武雄市スポーツ振興基金の目的は、スポーツ及び体育の普及、スポーツ団体の育成・活動促進、社会体育の振興である。
では、今回のプレシーズンマッチ1試合で何が達成されるのか。
・「スポーツ及び体育の普及」は、どの程度進むのか。
・「市内のスポーツ団体の育成・活動促進」に何が残るのか。
・「社会体育の振興」として、どの成果を測るのか。
来場者がいた。賑わった。盛り上がった。市民が元気になった。それはイベントの結果であって、基金条例の目的達成を測る指標にはならない。
ならば武雄市は、少なくとも説明を尽くすべきだ。
同じ1,700万円を、少年スポーツ、部活動の地域展開、指導者育成、体育施設の備品、障がい者スポーツ、生涯スポーツに使う案と比較したのか。
比較したうえで、なぜ一日限りのプレシーズンマッチが最も合理的だと判断したのか。
ゴールリース、コート整備、チーム交通費、宿泊費などの支出が、それぞれ基金条例のどの目的に対応するのか。
開催後、何を測れば「スポーツ振興基金の目的を達成した」と判断するのか。
そこが示されていないなら、「基金だから問題ない」という説明は、財源の所在を言っているだけで、支出の正当性を説明していない。
しかも、今回の金額は小さくない。
令和8年度当初のスポーツ振興基金の年度末残高見込は約4,100万円。今回の補正1,700万円は、その4割超に相当する。これを一つのイベントで動かすなら、通常の事業以上に、目的、優先順位、将来影響、効果検証を丁寧に示すべきである。
基金だから良いではない。基金だからこそ重い、のだ。「スポーツに関係しているから使える」では説明不足。「議会で賛成多数で可決されたから良い」でもない。議会の多数決は、政治的に通ったという意味であって、基金処分の合理性や費用対効果を証明するものではない。
本来、まともな自治体であれば予算計上の順番はこうだ。
まず政策目的を明確にする。次に成果指標を置く。取り得る代替案を比較する。必要額を積算する。最後に、最も適切な財源を選ぶ。
ところが武雄市の説明を時系列で見る限り、市制施行20周年、交流とにぎわい、公式戦さながらの環境整備、健康づくりが混在している。
目的が整理されないまま、後から使えそうな基金を当てたように見える。
これでは、基金活用ではなく、後付け財源である。基金が財源だから問題ない、は通用しない。何度も言うが、基金は市民の財産である。
この1,700万円が、何の目的を、どの支出で、どれだけ達成するのか。なぜ他のスポーツ振興策より優先されるのか。終了後に何をもって効果があったと判断するのか。それを示さないまま「基金だからいい」と言うのは説明としてあまりに粗い。

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