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種田 昌克 ブログ

「叱る」と「暴力」のあいだで

2026/5/26

我が家は、警察署から歩いてすぐのところにあります。
昨年のことです。私が39度の熱を出して寝込んでいたとき、息子が祖母に対して聞き分けのないことを言いました(私が水族館に連れていく約束をしていたのに行けなくなったため、祖母に連れて行けといったわけです)。私はそれを見て、ついカアッとなり、大きな声で叱ってしまいました。
すると息子は、近所にある警察署へ行き、「父親に暴力を振るわれた」と訴えました。しばらくして、我が家に警察官がやってきました。熱があると伝えると警察官は帰っていきましたが、後日、あらためて警察署で事情を聞かれることになりました。
事情を説明すると、すぐに帰してもらうことはできました。しかし、その後、また熱がでて38度に達しました。体もしんどい。心もしんどい。何とも言えない気持ちになったことを、今でもよく覚えています。
もちろん、暴力はいけません。
これは大前提です。親であっても、子どもに手を上げてよい理由にはなりません。今は法律上も、しつけに際して体罰を加えてはならないことが明確にされています。こども家庭庁も、体罰によらない子育てを社会全体で広げる必要性を示しています。
一方で、親として子どもを育てる難しさも、私は痛感しています。
昭和の時代に少年時代を過ごした私は、父親からわけのわからないことでよく叱られました。理不尽だなあと思ったこともあります。それでも、当時の私は警察に通報するなどという発想はありませんでした。今となっては、それも父親との思い出の一つになっています。
しかし、時代は変わりました。
親の言うことは絶対。げんこつ一つで分からせる。そんな感覚は、もはや通用しません。親の側に「しつけのつもりだった」という思いがあっても、子どもが恐怖を感じれば、それは子どもの側から見れば暴力であり、虐待として受け止められることもある。ここに、現代の子育ての難しさがあります。
試しに、警察官に聞いてました。
「もし、息子が近所で万引きをしたとします。私がそのお店に謝りに行って、その場で息子の頭をゴツンとやったら、私は逮捕されますか」
答えは、はっきりしていました。
「逮捕されます」
正直、愕然としました。
もちろん、法律の立場からすれば当然なのかもしれません。けががなくても、暴行があれば暴行罪に問われる可能性があります。親子であっても、そこに例外があるわけではありません。
ただ、親としては考え込んでしまうのです。
悪いことをした子どもを厳しく叱りたい。人としてしてはいけないことは、してはいけないと教えたい。社会に出る前に、親として本気で向き合いたい。
しかし、その「本気」が怒鳴り声になり、手が出る寸前までいき、子どもに恐怖を与えるなら、それはもう教育ではなくなってしまう。親の側も、自分の怒りをどう制御するのかを学ばなければならない時代になったのだと思います。
そんなことを考えていたところ、読売巨人軍の阿部慎之助監督が、娘さんへの暴行容疑で現行犯逮捕されたというニュースが流れました。報道によれば、児童相談所への相談をきっかけに通報があり、警察が対応したとされています。球団も深刻に受け止め、監督代行を置く方針を示したと報じられています。
私はこのニュースに、大きな衝撃を受けました。
繰り返しますが、暴力は絶対にいけません。どのような事情があっても、子どもを傷つけてよい理由にはなりません。
ただ同時に、何があったのかを知りたいと思いました。家庭の中で何が起きたのか。父親として、どのような感情が爆発したのか。娘さんは何を感じたのか。家庭という密室の中で起きる親子の衝突を、社会はどう受け止め、どう支えていくべきなのか。
そう思っている父親は、全国に少なくないのではないでしょうか。
子どもを守るために、警察や児童相談所が迅速に動く社会は必要です。実際、親による信じがたい虐待事件が後を絶たない以上、「家庭のことだから」と見過ごすことはできません。警察も児童相談所も、本当に大変な仕事を担っていると思います。
けれども、親をただ責めるだけでは、問題は解決しません。
子育てに悩む親がいる。怒りを抑えきれない親がいる。子どもとの距離感に戸惑う親がいる。昭和の価値観で育った親が、令和の子育ての中で立ち尽くしている。そこにも目を向ける必要があるのではないでしょうか。
厳しく育てることと、暴力を振るうことは違う。
叱ることと、支配することは違う。
親の威厳と、子どもへの恐怖は違う。
この線引きを、私たち親自身がもう一度学び直さなければならない時代になりました。
子どもに対して、「なぜだめなのか」を言葉で伝える。怒りが込み上げたときは、一度その場を離れる。親だけで抱え込まず、家族、学校、地域、専門機関に相談する。そうしたことを、きれいごとではなく、本気で考えなければならないのだと思います。
私自身も、偉そうなことは言えません。
あの日、熱を出しながら警察署から帰ってきたとき、腹立たしさと情けなさと、そして少しの反省が入り混じっていました。
子どもを育てるとは、本当に難しい。
しかし、その難しさから逃げずに、暴力ではなく言葉で、恐怖ではなく信頼で、子どもと向き合う努力を続けるしかありません。
阿部監督の件については、今後の事実関係を慎重に見守る必要があります。
ただ、このニュースは私たちに問いかけています。
親は、どこまで子どもを叱ってよいのか。
厳しさとは何か。
しつけとは何か。
そして、家庭の中の怒りを、社会全体でどう受け止めていくのか。
これは有名人だけの問題ではありません。
どこの家庭にも起こりうる、令和の親子関係の重い問いなのだと思います。

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種田 昌克

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