2026/6/14
ふるさと納税について、少し考えさせられるニュースがありました。
会計検査院が地方財政について調べたところ、2017年度から2024年度までの8年間で、ふるさと納税が地方自治体全体の決算に与えた影響は、総額で約3200億円のマイナスになっていたというのです。
ふるさと納税というと、多くの人にとっては「お得な制度」という印象が強いと思います。寄附をすれば返礼品がもらえる。応援したい自治体を選ぶことができる。地方の特産品を知るきっかけにもなる。確かに、制度にはそうした良い面があります。
しかし、地方財政全体で見ると、話はそれほど単純ではありません。
ふるさと納税では、寄附を受けた自治体には収入が入ります。一方で、寄附をした人が住んでいる自治体では、住民税の控除によって税収が減ります。さらに、寄附を集めるためには、返礼品代、送料、広告費、ポータルサイトへの手数料など、さまざまな経費がかかります。
つまり、全国の自治体全体で見た場合、「入ってくるお金」と「失われる税収」と「募集にかかる経費」を合わせて考えなければ、本当の姿は見えてきません。
今回の会計検査院の指摘は、まさにその点を突いたものだと思います。
制度が始まった当初、ふるさと納税は、生まれ育ったふるさとや応援したい地域を支える仕組みとして期待されていました。都市部に集中しがちな税収を、地方に還流させるという理念もありました。
ところが、制度が大きくなるにつれて、いつの間にか「どの自治体を応援するか」よりも、「どの返礼品が一番お得か」が前面に出るようになりました。自治体側も、寄附を集めるために返礼品競争に巻き込まれます。その結果、本来であれば住民サービスに使われるはずの財源の一部が、返礼品や募集経費に流れていく構図が生まれています。
もちろん、ふるさと納税によって救われている自治体や事業者もあります。地域の農産物や水産物、伝統産業を全国に知ってもらうきっかけになった例も少なくありません。災害時の支援として活用されることもあります。その意味で、制度そのものを一概に否定するつもりはありません。
ただし、地方財政全体でマイナスが出ているのであれば、やはり制度設計を見直す時期に来ているのではないでしょうか。
地方自治体にとって大切なのは、安定した財源をもとに、福祉、教育、防災、道路、上下水道、子育て支援など、住民生活に直結する行政サービスをしっかり提供することです。ふるさと納税によって一部の自治体が潤う一方で、多くの自治体が税収流出に悩み、さらに全国全体では経費負担によってマイナスになるということであれば、これは「地方を元気にする制度」と言い切れるのか、改めて考える必要があります。
ふるさと納税は、個人にとっては楽しく、便利で、お得に感じられる制度です。しかし、自治体財政の視点から見れば、そこには見えにくい負担があります。
「誰かが得をしている」ということは、どこかで誰かが負担しているということでもあります。
これから必要なのは、返礼品の豪華さを競うことではなく、寄附金が地域の何に使われ、どのような成果につながったのかを見える化することだと思います。そして国には、ふるさと納税が地方財政計画や自治体経営にどのような影響を与えているのか、継続的に検証し、必要な見直しを行ってほしいと思います。
地方財政は、決して打ち出の小槌ではありません。
ふるさとを応援する制度であるならば、ふるさとの行政サービスを支える財政そのものを傷める制度であってはならないはずです。
ふるさと納税を「お得な買い物」のように終わらせるのではなく、地方自治と地方財政のあり方を考えるきっかけにしていくことが大切ではないでしょうか。
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